明石優 インタビュー

明石優

旅の途中でどこでも自分のお店を出せて、お客さんの靴を磨いている間はその人とのコミュニケーションを独占できる。そこに、面白さを感じた

横浜にある「カメヤ食堂」にて撮影。開放的な空間が気持ちいい 横浜にある「カメヤ食堂」にて撮影。開放的な空間が気持ちいい

Double Sole(以下DS):まず、最初の質問ですが、靴磨き職人になったきっかけを教えて下さい。


明石優さん(以下明石):20歳の時に、自転車で日本中を旅していました。横浜出発で、絵を描きながら。
その旅の途中で、ブリフトアッシュの長谷川に会ったんですよ。
彼はその時、靴磨きで日本を一周していて、同年代で面白いやつがいるなーと思って、話しかけて仲良くなった。当時の僕は学生だったので革靴を履かなかったし、靴磨きっていう職業も一昔前のイメージだった。
しかし、長谷川の靴磨きをしている姿を実際に見て、”旅の途中でどこでも自分のお店を出せて、お客さんの靴を磨いている間はその人とのコミュニケーションを独占できる”。そこに、面白さを感じた。
人と繋がれる1つの技として、靴磨きがとても面白く感じた。
その後横浜に帰ってきたら、彼から「イベントの人数が足りないから、手伝いにきて」と言われ、それがきっかけで靴磨きを始めましたね。


DS:靴を磨いて何年になりますか?


明石:磨き初めて、9年目になります。

お客さんが、さらに靴を愛せるようになった瞬間を感じられる時が、磨いていて良かったと思いますね

通りを歩く人と会話を楽しみながら靴磨き 通りを歩く人と会話を楽しみながら靴磨き

DS:靴磨きの楽しさとは?


明石:磨いた靴を見た時、履いた時に自分の中でテンションが上がっているのを感じられること。
お客さんの靴を磨くことに関して言うと、磨き終えた靴に「今までごめんね」って語りかける人がいます。靴磨きがきっかけで「靴と仲直りする」人って、けっこういるんですよね。
靴の大事さや、物の大事さを考えるきっかけになります。靴に謝ったり、靴と仲直りしたり。
お客さんが、さらに靴を愛せるようになった瞬間を感じられる時が、磨いていて良かったと思いますね。


DS:靴磨き職人として、辛かった思い出は?


明石:思い出せないです。辛かった思い出は、忘れちゃいますね(笑)。


DS:得意、不得意の靴はありますか?


明石:僕は絵を描いているので、染め替えとかの色の感性は強いですね。
他の靴磨き職人よりも、この感性は負けない自信があります。
不得意の靴はないですね。

サフィールノワールを使っています。 ブリフトアッシュ時代から使っていますが、色の深み、クリームの伸び、浸透率、艶がいいですよね

明石さんが使っている靴磨き道具 明石さんが使っている靴磨き道具

DS:明石さんが普段使っている道具の説明をお願いします。クリームは何を使っていますか?


明石:サフィールノワールを使っています。ブリフトアッシュ時代から使っていますが、色の深み、クリームの伸び、浸透率、艶がいいですよね。
他には、コロニルの1909を使っています。


DS:使っているブラシは何になりますか?


明石:持ち運び用のセットでは、6本使っていますね。
江戸屋さんの馬毛、豚毛、山羊毛、スエードブラシです。


DS:ブラシを買う際のポイントってありますか?


明石:靴のブラシは毛がしっかり詰まっている物がいい。上から見て、下の木材が見えないぐらい毛が詰まっている物がいいですね。
ホコリ落としのブラシは、毛足が長い方がいい。
豚毛ブラシは詰まっている事に加えて、白い毛がいいですね。白い毛の方が塗ったクリームの色が付くので、状態が分かりやすく使い勝手がいい。

「aozora靴磨き教室」は参加しやすい雰囲気なので、ぜひ遊びに来てください

明石さんが磨いた靴 明石さんが磨いた靴

DS:明石さんがライフワークとしている、「aozora靴磨き教室」について教えてください


明石:もっと身近に靴磨きを知ってほしくて始めた活動です。
公園などの野外で靴磨きの教室を開いています。代々木公園で一回目を始めて、今では3年目になります。毎月、Facebook、ホームページでゆる〜い募集をかけています。2週間前ぐらいに突然募集をかけたりすることもあります(笑)。
時間が合う人が来てくれて、今でも続いています。


DS:aozora靴磨き教室の参加者は、どんな方が多いですか?


明石:ほぼ、初心者の方ですね。
参加しやすい雰囲気なので、ぜひ遊びに来てください。


DS:自由大学でも靴磨き講義をしていると思いますが、今後の講義の予定はありますか?


明石:ちょうど新しい講義が始まります。
9月30日から5週間、毎週火曜日の19時半から始まります。
場所は、池尻にある世田谷ものづくり学校です。
自由大学のHPに行けば、詳細が分かります。(https://freedom-univ.com/lecture/shoe_shining.html

靴を買うタイミングって、人生の良いタイミングで買うのがいいと思う

カメヤ食堂に描かれているカラフルなペインティングは、明石さんが描いています カメヤ食堂に描かれているカラフルなペインティングは、明石さんが描いています

DS:家で靴を磨いている人へのアドバイスはありますか?


明石:靴のケアを単純に「人の肌」と考えると分かりやすい。
乾燥をすればヒビが割れる。
保湿をしないと、いろいろな問題が生じる。
手に使うハンドクリームを革靴に塗るだけでも、全く違いますよ。


DS:長く履き続ける靴を、買う際のポイントは?


明石:基本は「心がときめいた靴」を買うのがいい。
さらに補足して言うと、その中でも、つま先とかかとの芯がしっかりしている靴。ケアするクリームが対応できる靴。なので、少しでもケアの方法を事前に知っておくと、先を予想する事が出来るので購入しやすいですね。

あとは、20年後に履きたいと思う靴を買うこと。「すごいエイジングがされた靴」とか「将来子供が大きくなった時に、渡したい靴」とか。

思い出と合わせた買い方もいいですね。靴を買うタイミングって、人生の良いタイミングで買うのがいいと思う。結婚とか、入社とか。何かの始まりの時に靴を買うのはいいですね。靴を見た時に、思い出しますし。

靴を履く事を、あんまり気張らない方がいいと思う。 人生と同じように、楽しめばいいと思います

磨き終わった靴と一緒に 磨き終わった靴と一緒に

DS:今まで靴を磨いた事がない人に対して、アドバイスはありますか?


明石:磨くと考えるよりも、育てると考えた方がいいかも。
”物を長く大切に育てて、自分が作れない物だけ買って、直せる物は直して、職人をリスペクトして”。
靴磨きと言うのは、最終的には「物を大事にする」っていう気持ちのキッカケとして、とても分かりやすい。
なので、靴磨きを通して、物を大事にする気持ちが芽生えたら嬉しいですね。


DS:最後に、ダブルソールの読者に対してメッセージがあればお願いします。


明石:靴磨きがきっかけで生まれる「物を大事にする」気持ちを大切にして欲しい。たまたま僕は靴磨きが得意なので、靴磨き職人として伝えています。単純に言うと、靴を磨いた方が、毎日歩くの楽しいですよ。

あと、簡単に物を捨てたくないと思う気持ちを大事に。
靴磨きは、職人さんにお願いするのも1つだし。自分で磨くのも1つだし。いろいろな楽しみ方があるので、決まりがない。ルールは何にもない。
靴を自分の相方だと思えば、自ずと磨くのかなと思っています。大事にすればするほど愛着が出る。履けば履くほど、キズが付く可能性がある。でもキズが付いたら、それを修復して。好き、使う、キズを付ける、直す、また使う。これって、人間関係と一緒ですね。

なので靴を履く事を、あんまり気張らない方がいいと思う。
人生と同じように、楽しめばいいと思います。

メモ

<スケジュール>
・毎週金曜日 東横線反町駅の「カメヤ食堂」にて靴磨き
郵送の場合は住所がアトリエになるため問い合わせお待ちしております。
・毎月1回 aozora靴磨き教室を開催(日程はHP確認)
・9/30より自由大学にて、「20年履ける靴に育てる」講座開始

Double Soleスタッフの感想

青山にある「ブリフトアッシュ」の創立者として有名な明石さん。
現在では、公園で靴磨きをする「aozora靴磨き教室」の開催や、「自由大学」で靴磨きの講師をしたりと、靴磨きの素晴らしさを幅広い人に伝えています。
今回のインタビューを通して感じたのは、靴を磨く事は ”靴が綺麗になる” だけではなく、”物を大事に扱う気持ちを育む” ことなんだと強く感じました。そして、靴磨きを通して、現代の「飽きたら物を捨てる。新しい物を買う。」という時代を考えるキッカケを与えてくれました。
ファストファッションの時代に逆らって、「モノを大事にする世界」を作っている明石さんを、ダブルソールはこれからも応援していきます!!

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